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アメリカの宇宙開発企業であるスペースX社が打ち上げる通信衛星「スターリンク」。
人工衛星が列車のように一列になって光を放ちながら夜空を走る姿が、まるで銀河鉄道のように見えると話題のスターリンクトレイン。
次に肉眼で見えるタイミングはいつでしょうか。
スターリンク衛星とは
スターリンク衛星とは、イーロン・マスクが代表を務めるアメリカの宇宙開発企業スペースXが運用している、インターネット通信衛星のことです。
スぺ―スX社は2023年10月現在で60か国以上にこの通信衛星でのインターネットサービスを提供しており、今後は携帯電話事業にも拡大する予定だそうです。
世界中のユーザーに向けて高速インターネット網を確立するため、スペースX社は2019年から人工衛星を打ち上げ、2023年11月時点で5000基の衛星打ち上げに地球の低軌道に乗せることに成功しており、数年のうちに12,000基の衛星を展開することを計画しています。
日本ではKDDIがスペースX社と業務提携し、地上ステーションの設置と運用を担っており、北海道、秋田県、茨城県、山口県に中継所を設けています。
スターリンク衛星は、一度に40~50基連なって打ち上げられ、それらが列車のように連なって光を放ちながら夜空を走る姿がまるで銀河鉄道のように見えることから、スターリンクトレインと呼ばれ、SNSなどでも画像や動画がよく見かけます。
スターリンク衛星2023年11月 次に肉眼で見えるタイミングは?
ここ何日かGood Visibility(よく見える)でスターリンク衛星を見ることが出来るタイミングはありませんでしたが、再びチャンスがやって来ました。
スターリンク衛星の観測予想ができる無料のウェブサイトFind Starlinkによりますと、次に東京で肉眼でみることが出来るチャンスは下記の通りです。(2023年11月26日時点)
(※Find Starlinkの詳しい調べ方については、こちらをご覧ください)
2023年11月27日 5.53PM
Starlink-121 (G6-29) (新), 明るい (3.9)4分間出現予定
西261° から北西299°へ
地平線からの上昇角度: スタート時10°, 最高38°, 終了時38°
Find Starlinkの情報はひじょうに精度が高いですが、軌道の影響等で随時更新されますので、こまめにチェックしましょう。
スターリンク衛星2023年11月22日
11月は3~4週目にも数回チャンスはあり、X(旧ツイッター)にもたくさんのスターリンクトレイン動画があがりました。
そして私もあまりうまくありませんが、携帯電話のカメラで捉えることが出来ました。
その時の画像がこちら。(画像の上半分に斜め一列に並んだ光)
この写真を撮った時の状況は、視界は大きく開けていましたが、周囲に街灯や建物の明かりがあり最適な環境ではありませんでした。
それでも肉眼で銀河鉄道のような光の列を見ることが出来、普通のiPhoneのカメラで撮影することもできました。
スターリンク衛星がいかに明るいかがわかります。
それにしても、みなさんがSNSにアップしているようなきれいな画像を私も撮影してみたいものですが、望遠レンズが必要ですね。
以前にiPhoneのビデオ機能でスターリンクを試みた時も、画像に一瞬は映り込んだものの上手くおさめることが出来ませんでした。
明るさ(輝度)を落としたスターリンク衛星
毎日Find Starlinkのウェブサイトをチェックするも、ここ数日なかなか「Good Visibility」(よく見える)のチャンスが訪れずませんでした。
日々このウェブサイトをチェックしていますと、たまにサイトのトップ画面に下記のようなメッセージが現れることがあります。
「ユーザーからのレポートによると、スターリンクトレインはこのところなかなか見えずらいようです。
これは天文学関連の方々の邪魔をしないよう、スターリンク社が衛星の輝度を落としているためです。
しかし、スターリンク衛星の観測に成功したというレポートも日々ありますので、がんばってみてください。
私たちは、より正確に予測できるようにがんばります。
数週間以内に新たなスターリンク衛星の打ち上げが予定されており、打ち上げ後3~4日ほどは明るく見えることでしょう。」
ということで、意図的に明るさをコントロールしているとのこと。
スターリンクトレインが見えづらくなる理由はここにありました。
天文学におけるスターリンク衛星の明るさ問題
スターリンクはなぜ明るさを調整する必要があるのでしょうか。
今後12,000基もの人工衛星が地球の低軌道に打ち上げられると、それら衛星は90分で地球を周回することになり、常に200基近くが上空に見えることになると予想されています。
2019年頃より、天文観測に大きな支障が出るとしてスターリンク衛星自体が問題となりはじめ、国際天文学連合や日本からも国立天文台などがスペースX社に対して、こうした懸念点について正式なコメントを出しています。
この対策としてスペースX 社は、試験的に機体を黒くコーティングして55%まで輝度を落としたと言われる衛星を打ち上げましたが、天文学者の間ではまだ明るすぎるとして問題解決にはなりませんでした。
2020年4月、スぺ―スX社はさらに衛星の輝度を下げる設定した衛星を導入すると発表しましたが、先に導入されたデザインに比べてわずかに暗いだけであることがわかりました。
国際天文学連合は、2022年についにこうした衛星による悪影響に対処するためのセンターを設立しました。
2023年2月、スペースX社は鏡のような表面をもつ次世代型の小型衛星を導入し、太陽光を宇宙空間に反射させることで、地上からの観測においては暗い面だけが見えるように衛星の向きを調整する、としています。
これに対して2023年6月には天文学研究機関が、「スターリンク衛星は、最終的に軌道に乗れば明るさは従来の19%に軽減されるが、軌道に到達するまでの間は12倍明るく見える」との研究結果を発表しました。
これだけの明るさがあるために、打ち上げ直後のスターリンク衛星は、銀河鉄道のように肉眼でも見ることが出来るのですね。
さらに2023年10月、ある天文学研究機関からも「スターリンク衛星から放たれる電波放射は、自然発生のどの光よりも明るく有害である」との論文が発表されました。
夜空を走る美しいスターリンクトレイン、スペースX社も次々と対応策を打ち出してはいますが、今後の星空での共存が課題となるようです。